about us
漆作家の野田とし子先生には、長年家族ぐるみでお世話になっています。先生は、作品づくりだけでなく、漆文化を伝えるためにご自宅で漆教室もしています。我が家でも漆の器や家具など創る機会をいただきました。
そして、野田先生と共に過ごす中で色々な話を聞きました。便利で安い食器の普及で民芸が衰退したこと、後継者不足で伝統技術が風前の灯であること、など。あまりに根深い課題でどう解決するか思いつきませんでした。
ある時、先生のご自宅に足を運ぶうちに、ふと気づきました。先生の作品は、漆器だけなのではなく、古来より日本人が大切にしてきた「木と自然と共に生きるサステナブルな暮らし」そのものを体現していることではないかと。
私は感動し、先生のような究極な暮らしはできないけれど、自分なりに暮らしに反映していこうと心に決めました。きっと、そういう体験を増やしていくことが、伝統文化の課題解決につながるのだろうと信じています。
建築士・環境工房代表 故小川眞由氏
VINTAGINGが入居している建物の元オーナーであり、建築士で環境工房代表の故小川眞由氏。
小川さんは、自宅を開放し、どんな人でもくつろぎ笑顔になれる居場所をつくった人だった。美味しい食事やお酒を振る舞うだけでなく、その背景にある文化の意味を教えてくれた。お正月のお雑煮やお屠蘇、おせち料理の謂れから、世界各地の食文化や暮らしの知恵まで——日本に限らず、人が大切にしてきた文化を、言葉ではなく体験として伝えてくれた人だった。
そんな小川さんの場に初めて訪れ、お会いした瞬間にインスピレーションが働いて、マンションの一室を借りて住むことを決めた。
毎回500円玉を持って行くと、冷蔵庫にあるものを自由に使わせてくれ、料理を教えてもらった。できた味噌汁を一緒に飲んで「るい、まだまだだな」「ずいぶん、よくなったね」と、具体的なことは言わず、寡黙に返事をくれる料理の師匠だった。
その後NPOの事務所を借りたり、新たに家を借りて結婚や出産の時間も過ごした。10年近いおつきあいの中、小川さんはガンになってしまった。そして最期は看取ってお別れした。
おうちで味見をしながら味噌汁をつくる。家族から「おいしい!」といわれることも多い。
そのときに、僕の中に確かに小川さんの存在があることがいつも思い起こされる。
そして、十数年経ち、建物を引き継いだお姉さんと甥っ子・姪っ子さんとの関わりが続き、VINTAGINGの場所を借りることになった。
今度は、自分たちなりの文化発信の場所をつくっていこうと思う。
子供が生まれ、共働きでバタバタと過ぎていく日常を保つのに精一杯の毎日。自分の理想の姿を暮らしの中で実現できない矛盾に、妻はずっと苦しんでいた。
「いつか中古マンションを買って、自分の理想の部屋を実現したい」——いろんな場所を見ては考えていた妻に対し、その時は「あなたはそこに住むんじゃなくて、一人暮らしをしてきてね」と冗談混じりに言っていた。
でも、「住む場所が一つ」という制約条件のせいで、今の現実でその「いつか」が叶えられないとしても、日常の空間と非日常の空間を作れば両立できるかもしれない。そのインスピレーションによって、かなえワークスの事務所で自分の好きな空間を作るということが、この場所のスタートラインになった。
これまでずっと我慢してきたヴィンテージ家具をたくさん買いながらも、本当に必要なものは何か、周りの人に使ってもらうにはどうすれば心地が良いか、いろいろと考えながら日々試行錯誤している。小さい頃はシルバニアファミリーが好きだったそうで、「これはまさにリアルシルバニアファミリーだね」と言いながら、夫婦でせっせと今日も重たい家具を運んでいる。
我々もまだヴィンテージングの現在進行形。これまで夫婦で感じてきたいろんな人たちの想いを取り込みながら、この場で自分たちの生き様も含めて発信していけたらと思っています。
我が家の日常の中の非日常を切り取ったギャラリーカフェで一緒に過ごしていただくことで、お客さんもスタッフも、関わってくれる人たちが、自分らしい暮らしと人生を歩むきっかけになれば幸いです。
経営コンサル、NPO、ソーシャルベンチャー、グロービス、コーチング——今の仕事だけでは何か足りないものがあると感じて、働き方を選択してきた結果、気づけばパラレルキャリアが広がっていた。
その中で強く思うのは、自己実現のための仕事は、既存の職種の枠を超えた「広がり」や「細やかさ」があるということ。既存の仕事に自分を合わせるのではなく、自分の自己実現のために多様な職業を持つという選択肢が実はある。
私たちに関わってくれている人たちも、「自分が大切にしていることを仕事にしたい」という想いで関わってくれたり、将来の夢のために「今ここで働いてみたい」と飛び込んでくれたりする。「事業は畳むけれど、大切なお客様との関わりは残したい」と、ここでコミュニティを作ってくれる方もいる。
この場で働いたり関わったりすることで、自分の人生を考える機会になってもらえると嬉しい。そんな仲間と一緒に VINTAGING していければと思っている。